Instagramの投稿からECサイトへのリンクを貼れる「ショッピング機能」を活用する企業が増えています。購買意欲をかき立てる投稿から、そのままECサイトへ顧客を誘導できるので、Instagramはいまや重要な販促ツールです。
しかし、ショッピング機能の導入手順は、ECサイトのドメイン認証やFacebookと連携させたのち、審査を受ける必要があり複雑です。また、せっかく導入できても効果的な運用ができなければ、結果が出ないでしょう。
この記事では、ショッピング機能の導入方法と運用のコツについて解説しています。無料で使える販売促進ツールとして、Instagramを活用したい企業担当者の方は参考にしてください。
Instagramのショッピング機能「Shop Now(ショップナウ)」にできること
Instagramには、ショッピング機能「Shop Now(ショップナウ)」があります。
ショッピング機能を使うと投稿画像に商品タグを付けられ、商品タグからECサイトなどの購入ページへ誘導できます。つまり、Instagramの投稿で購買意欲が刺激されたユーザーをシームレスにECサイトへ案内できるのです。
ショッピング機能を利用するにはFacebookページを用意し、ECサイトのドメイン認証を受け、Instagramのアカウントと連携させるといった手間はありますが、利用費用はかかりません。無料で使え、売上の向上が期待できるので、販売戦略としてぜひ活用したいツールでしょう。
ただし、このショッピング機能は現状、スマートフォンアプリ版のみのサービスです。パソコンからのアクセスや、アプリを使わずWebブラウザから閲覧するユーザーには効果がありません。
とはいえ、Instagramユーザーの多くはスマートフォンアプリを利用しているため、得られるメリットは非常に大きいと言えるでしょう。
Instagramのショッピング機能を導入する方法
Instagramのショッピング機能を導入するには、準備や審査の手間がありますが、無料で使える販売促進ツールとして魅力的です。
審査に落ちても、繰り返し再審査が可能なので、手順を確認しながら根気よく向き合いましょう。
要件を満たしているかの確認
まずはコマース参加資格を満たしているか、利用要件を確認しましょう。参加資格の要件には、次の項目が挙げられています。
- InstagramおよびFacebookのアカウント・ページが各種利用規約・基準・ポリシー等に反していない
- 取扱商品がWebサイトから直接購入できる状態にあり、販売サイトのドメインは認証を受けること
- InstagramショッピングやFacebookショップに対象している国・地域に所属する企業であること
- 信頼できるアカウントであり続けること(フォロワー数の維持を含む)
日本は対応地域なので、国内に拠点を持って販売しているなら問題ありません。しかし、海外展開していて、拠点が海外にある場合などは注意が必要です。
また、これらの要件を満たしていないとショッピング機能が利用できず、アカウントも無効にされる場合があるので注意しましょう。
Instagramをビジネスアカウントに設定
Instagramのアカウントには「ビジネス」と「クリエイター」がありますが、ショッピング機能を利用するなら「ビジネス」アカウントにしましょう。
「ビジネス」に設定すると、次の機能が利用できます。
- インサイトでフォロワーや投稿の分析
- 連絡先や所在地住所の掲載
- 投稿を使った広告出稿
「クリエイター」アカウントでも、自作グッズやハンドメイド雑貨などが販売できるようにショッピング機能が使えます。しかし、アカウント運用に欠かせないインサイト機能は、「クリエイター」アカウントでは使えません。
有益な情報を活用するため、Instagramのアカウントは「ビジネス」に設定しましょう。
連絡先や所在地をプロフィールに掲載できる
Instagramのプロフィールページに、問い合わせ窓口や住所が掲載されていると、顧客に安心感を与えられます。店舗の所在地が載っていれば、そのまま来店につながる可能性もあるでしょう。
インサイト(分析ツール)が利用できる
効果的な運用のために参照したい情報を見られる、インサイトが利用できるのは、ビジネスアカウントだけです。
インサイトでは、フォロワーの情報や投稿の閲覧数、いいねの数値などが見られます。これらの数値を分析すれば、フォロワーの獲得・維持に必要な施策に加え、どのような投稿の反響が大きいかといった情報が獲得できるのです。
投稿を広告としてInstagram内に掲載できる
費用はかかりますが、ビジネスアカウントでは投稿内容をそのまま広告として打ち出せる機能があります。
投稿を広告出稿すると、フォロワー以外にも投稿を見てもらえるきっかけになり、フォロワーの新規獲得と集客につながるでしょう。
Facebookページを作成
Instagramのショッピング機能を使うには、Facebookページを用意しなければなりません。
FacebookページはFacebook上で作れる、商用利用可能な企業やブランドのホームページです。Facebookページを作成する際、「ビジネスまたはブランド」と「コミュニティまたは公人・著名人」を選択できますが、ショッピング機能を使うなら「ビジネスまたはブランド」を選択しましょう。
Facebookページは無料で作成でき、複数人での管理も可能です。Facebook上での集客ツールとしても活用できるので、Facebookアカウントを持っていないなら取得し、作成しましょう。
Facebookでビジネスマネージャを設定
Facebookページの更新を複数人で行うには、ビジネスマネージャの設定が必要です。
掲載する商品情報の登録や更新といった管理業務を、すべて1人で行うなら不要ですが、業務を分担するならビジネスマネージャを設定しておきましょう。
なお、ビジネスマネージャでは、個人のアカウント情報は共有されません。同僚にFacebookの個人アカウントを知られたくない場合も、安心して使えます。
Facebookページに商品登録
Instagramのショッピング機能を使って、商品タグの付いた投稿をするには、Facebookページに商品情報を登録する必要があります。
取り扱える商品は形あるものに限定され、形のない施術や鑑定サービスは扱えません。そのほか、成人向け製品やアルコール、経口サプリ、医薬品といった禁止商品もあります。
禁止商品に該当すると、登録情報がFacebookページに反映されません。取り扱っている商品が禁止商品に該当しないか確認したうえで、登録しましょう。
登録した商品が、Facebookのポリシーに反していなければ、24時間以内に商品情報が表示されます。また、商品の登録方法は1件ごとに入力するほかにも、まとめて登録する方法もあります。
CSVやXMLデータに商品情報をまとめてアップロード
販売する商品の情報をCSVやXML形式のデータにしてアップロードすると、1件ずつデータ入力する手間を省けます。商品情報を更新する際も、新しいデータをアップロードすればまとめて更新できるので、便利です。
取扱商品が複数あり、商品情報の更新頻度が高いなら、この方法が良いでしょう。
CSVデータで商品を登録する場合はテンプレートが用意されているのでダウンロードし、そのなかに商品情報を入力してアップロードします。
また、STORESやカラーミーなどでは、商品情報をCSVデータにしてダウンロードできるようにしています。Instagramを使った販売がスムーズにできるように提供されているサービスなので、ぜひ活用するとよいでしょう。
ECサイトからインポートして商品情報を反映
Facebookと連携できるパートナープラットフォームECサイトであれば、ECサイトに登録している商品情報がそのまま反映できます。ECサイト側の情報が更新されれば、定期的に同期してFacebookの掲載情報も更新されるので、手間がかかりません。
パートナープラットフォームになっていないECサイトでも、ECサイト作成サービス側がインポートできるツールを用意している場合もあります。
たとえば、BASEでは「Instagram販売 App」という機能があり、これを使うとBASEに登録している商品情報をそのままInstagramのショッピング機能でも使えるようになります。
個別に商品情報を登録
商品をひとつずつFacebookページに登録する方法です。商品数が少なく、内容の更新もあまりないなら、この方法でも問題ないでしょう。商品数が多いと手間がかかってしまうので、既に紹介した他の方法を選ぶことをおすすめします。
ECサイトのドメイン認証
Instagramのショッピング機能では、決済まで完結できません。現状、InstagramおよびFacebook内で決済までできるサービスは日本では提供されていないので、商品販売にはECサイトが必須です。
ECサイトのドメイン認証を受けていないと、ショッピング機能の審査に通らないので注意しましょう。自社ECサイトがある場合はそのサイトのドメインを認証させます。
また、ECサイトはECサイト作成サービスを利用して作ったものでも、問題ありません。
代表的なECサイト作成サービスを挙げておきます。もし、Instagramのショッピング機能の利用に合わせて、ECサイトが必要ならばこれらのサービスを利用してもよいでしょう。
Facebookページと連携させてショッピング機能の申請
FacebookページやECサイトの認証などの準備が整ったら、InstagramからFacebookページの連携設定をしましょう。連携設定すると、自動的に審査が始まります。
審査には、数日~1週間程度かかるので、それ以上待ってもInstagramショッピング機能が使えないなら、何らかの不備があったと考えられるでしょう。
その場合はこれまでの手順や各種設定を見直し、再度連携させて審査を受けます。
Instagramのショッピング機能を効果的に運用するには?
ここからは、ショッピング機能を効果的に運用するためのコツを解説します。
効果的な運用には、Instagramの特性や使える機能を理解し、同業他社や同じ客層をターゲットにしているアカウントを参考にして、よりよい運用スタイルを確立するのが重要です。
Instagram運用の基本をおさえる
まずはInstagramというSNSの特性を理解し、運用の基本をおさえましょう。ショッピング機能を使っても、基本的な運用のコツを外していると望んだ効果が得られません。
定期的な投稿を忘れない
SNS運用において、定期的な投稿は非常に重要です。
ユーザーがアカウントをフォローするのは、そこに自分の見たい投稿があるからです。投稿の間隔が空いてしまい、見たいものが得られないとなれば、存在を忘れられてフォローを外されてしまうでしょう。
フォロワー離れを防いで定期的な投稿ができるよう、運用の仕組み化を考えておくのもおすすめです。投稿の下書き保存の活用や投稿内容のテンプレート化を考えましょう。
正方形(スクエア型)になったときの見栄えを考える
Instagramで表示される画像は、正方形が基本です。タイムラインに並んだ正方形の画像のなかで、埋もれてしまったり、何を表現しているのか分からなかったりすると、気にとめてもらえません。
上下や左右が見切れても見栄えがよい画像を使い、写真の撮り方も工夫しましょう。
#●●(ハッシュタグ)を効果的に使う
InstagramなどのSNSでは、キーワードによる検索だけでなく「#●●」といった、ハッシュタグを使った検索もあります。
よい写真を投稿しても、関連するハッシュタグを使っていないと、見つけてもらえません。検索にヒットするよう、投稿した商品に関連するハッシュタグは積極的に付けるようにしましょう。
たとえば、アパレル系ならショップやブランド名だけでなく、ファッションのテーマや客層に関連したタグを使います。コーディネートの投稿には各アイテムやカラー、シーズンに関連したハッシュタグも付けるとよいでしょう。
飲食系でも商品名のほかに、料理ごとのカテゴリーや味わうシーンと関連付けたハッシュタグもおすすめです。
自社の商品ならどのようなハッシュタグが適しているか、競合するアカウントや客層となるユーザーの投稿を研究しましょう。
ショッピング機能でできること
Instagram運用の基本となる部分を理解したなら、ショッピング機能にできることを最大限活用しましょう。とくに、インサイトで見られるデータは、効果的な投稿のために重要です。
インサイトで得られる情報から投稿内容を分析する
ショッピング機能を利用すると見られるようになるインサイトでは、フォロワーの男女比や投稿に対してどの程度のアクションがあったかを確認できます。
これにより、自社のターゲット層を再確認できるとともに、反響のあった投稿を確認できます。どのような投稿であればフォロワーが見てくれるのか、ECサイトへの流入につながるのかを検証し、興味・関心を引く投稿に役立てましょう。
過去の投稿にも商品タグを付ける
ショッピング機能によって商品タグが付けられるのは、新規投稿だけではありません。過去の投稿にも商品タグを付けられるので、ショッピング機能が使えるようになったら過去の投稿にも手を加えましょう。
フォロワーが増え、アカウントが育ってくると、過去の投稿が日の目を見る可能性もあります。そんなとき、過去の投稿に商品タグが付いていないと、そこからの流入が望めません。
過去の投稿のなかにもフォロワーの目を引くものがあるなら、商品タグを付けておきましょう。
同じ商品のショッピング投稿を繰り返さない
売り込みたい商品があるからといって、日を空けずに繰り返し同じ投稿が続けば、フォロワーから飽きられてしまいます。プロフィールページにも同じ画像が何枚も表示され、見栄えが悪くなるでしょう。
投稿内容に目新しさがなくなると、フォロワーから飽きられる原因にもなります。しつこいと感じられて、最悪の場合はフォローを外されてしまうでしょう。
同じ商品を投稿する場合は間隔を空けたり、見せ方を変えたりといった工夫が必要です。
ショッピング投稿ばかりを連続させない
同じ商品の投稿でなくても、ショッピング投稿が目立ち、広告要素が強いと感じられてしまうとフォロワーが離れる可能性があります。
頻繁に届くダイレクトメールやチラシ広告の中身を見ずに捨てる人が多いように、Instagramの投稿でも同じことが起こりえます。
ショッピング投稿だけでなく、企業やブランドの裏話、店舗・スタッフの紹介といったエピソードも投稿内容に加えましょう。
発信者の裏側や側面を見せることで、フォロワーにより深く、自社を知ってもらうきっかけになります。フォロワーが自社のファンになってくれれば、購買意欲も高まり、口コミによる宣伝効果も期待できるでしょう。
1つの投稿に商品タグを使いすぎない
ショッピング投稿では、最大で5個まで商品タグを付けられますが、多く付けるのは逆効果です。
商品タグはハッシュタグとは異なり、画像の上に表示されます。せっかく見栄えのいい画像を用意しても、商品タグに覆われれば魅力が伝わりません。
画像の見栄えを考えると、商品タグは2~3個に留めておくのが無難です。
また、単純に商品を撮影した写真を投稿するのではなく、使うとどんな効果がある、どんな特徴がある、といったように入手後のストーリーが想像できる見せ方を考えましょう。
顧客には丁寧な対応を心がける
Instagram運用に限ったことではありませんが、顧客満足度を高めるように取り組むことも大切。
Instagramアカウントをフォローし、投稿を見たユーザーはその企業・ブランドに対して、期待度が高まっています。そんなときユーザーを裏切ってしまうと、2度と振り向いてもらえない可能性も。
ストーリーズを活用して細かくコミュニケーションを取ったり、フォローしている顧客へアクションを起こしたりといった小さな積み重ねを通して、ユーザーとの距離感を親密に保っておきましょう。
問い合わせへの対応はこまめにする
SNSにはメールのように直接連絡が取れるダイレクトメール(DM)機能があります。しかし、企業のSNSアカウントに顧客がDMを送っても、反応がなかったり、事務的な対応だけが返ってきたりすることも少なくありません。
スパムと思われるメッセージは無視で構いませんが、商品の感想や意見、苦情などの顧客の声には、誠意ある対応を心がけましょう。
せっかく寄せられた感想や意見に対しては、簡単な内容でもよいので、わざわざメッセージを送ってくれたことへの感謝を伝えましょう。
苦情については真摯に受け止め、必要な対応を取ります。すぐに回答できない内容であるならその旨を伝え、今後の報告は個別に入れるのか、ホームページで発表するのかなどの方針を伝えると、顧客の安心につながります。
こうした対応の違いは、他社との差別化ポイントになる部分です。顧客満足度の向上にも直結するので、あらかじめ対応できる体制を整えておきましょう。
受注が増えた場合を想定しておく
Instagram運用で効果が出ると、突然注文が殺到することがあります。とくにショッピング機能を導入すると、ECサイトへの流入が増えるため、そのまま注文が急増する可能性もあるでしょう。
企業としては嬉しい悲鳴ですが、実際に対応する現場は混乱が予想されます。発送作業の遅延や商品の欠品、業務が増えたことによる発送ミスなどが起きるかもしれません。
あるいは、ECサイトに不可がかかりすぎてしまい、サーバーダウンによって販売ができなくなる場合もあるでしょう。
もしも受注の急増に対応が追いつかず、注文通りに商品を届けられないと、顧客の期待を大きく裏切ることになります。せっかくの受注拡大チャンスを活かせず、顧客に悪い印象を与えてしまうでしょう。
こうした事態を避けるには、受注が増えた場合を想定して、あらかじめ対処方法を考えておくのが重要です。生産や発送体制を整えたり、InstagramやECサイト上で「発送が遅れる可能性がございます」という旨を記載したりするだけでも効果はあるでしょう。
社内の混乱を防ぎ、顧客の期待を裏切らずに済めば、Instagramがもたらす高い広告効果を味方にできます。
Instagramショッピングを導入したらコツをおさえて効果的に運用しよう
Instagramのショッピング機能を使うには、Facebookページの準備やECサイトのドメイン認証が必要です。
- 利用にあたっての要件を確認
- Instagramをビジネスアカウントに設定
- Facebookページを作成
- Facebookのビジネスマネージャを設定
- Facebookに商品情報を登録
- ECサイトのドメイン認証
- InstagramとFacebookページを連携して審査
以上のステップを経て、審査に通ればショッピング機能が使えるようになります。また、Instagramを販売促進ツールとして活用するなら、SNSの特性を理解し、効果的な投稿内容を分析しながら運用しましょう。